南の小言

100年健康を作るPTの日常

便利への抵抗感

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私が訪問リハビリを担当している利用者さんの過半数は高齢者であり、昔の話をよく聞かせて頂けます。私は完全に現代っ子である為、私の知らない世界線の話は非常に面白いです。

 

皆さんも知っての通り世の中はここ数十年で目まぐるしく変化し、とにかく便利な世の中になりました。紙媒体から電子媒体になり、スマホ一つで何でもできるようになりました。どこに行ってもそこにいるのはスマホの画面を注視する人々の群れ。分からないことは【考える】から【調べる】に変化しました。

 

子供は外で遊ぶことが普通だった昔、今はゲームが中心になっています。先日、訪問先付近の公園を覗くと子供たちが集まってわいわい楽しそうに盛り上がっていました。ただ、それぞれの手元には任天堂Switchがあり、外遊びとはとても言い難い光景でした。

 

人々は当たり前に食料を手に入れることができ、当たり前に道路には車が走り、当たり前にスマホを持っています。様々な便利が今となっては当たり前な事ですが、一昔前までは存在しなかった習慣ばかりです。

 

皆さんは【不便益】という言葉をご存じですか?

 

文字通り不便によって得られる益のことです。不便だからこそ苦労し、苦労するからこそ得られるものが世の中にはたくさんあります。一般的に不便から得られる益は大きく分けて8つあると言われています。

 

①主体感が持てる

②工夫できる

③発見できる

④対象が理解できる

⑤私だけ感がある

⑥安心、信頼できる

⑦能力低下を防ぐ

⑧上達できる

 

私は子供の頃昆虫が好きだったため、道端で見つけた昆虫を良く昆虫図鑑で調べていました。しかし、今はスマホがあればほんの数秒で答えが導き出されます。一苦労かけた知識は記憶に残りやすく、簡単に得た知識はすぐに忘れてしまいます。こうして世の中が便利になればなるほど、人々は考える機会を失っていきます。

 

ウォーリーを探せという本を購入したとしましょう。今の世の中で言えば、ウォーリーのことを探さなくてもネットで検索すればウォーリーの居場所が分かります。それって楽しいですか?

 

これは極論ですが、要は楽しても何も得られないということです。それはウォーリーを探すプロセスの中にこそたくさん得られるものがあるからです。

 

作業の効率化に目を向けることは大切ですし、仕組化できれば企業は大きく成長します。ただ、仕組の中で考えずに働いている人は全く成長しません。

 

こうして今後、考えて行動できる者と便利の中でただ生きる者の二極化が進行します。

 

オンラインは便利だが、ひと手間かけて対面で会議を実施したり、何かを見つけたときに敢えて写真には納めず目に焼け付けたり、調べ物を敢えてスマホを用いず参考書のみを使用したりと自ら不便な状況を作ることで得られるものがたくさんあると思っています。

 

時代の流れに乗る為に便利なものを駆使していくことは今後生きていく上では非常に大切な事だとは思いますが、不便益という概念を忘れず、便利への抵抗感を持ち続けると良いかと思います。

 

どうせ生きていくなら、便利活用力と考察力の二刀流でAIに負けない人間性を創っていきましょう。