南の小言

100年健康を作るPTの日常

施設が墓場と呼ばれる所以

「施設は墓場」

 

ネットではそう呼ばれていることがあります。

流石に墓場という言い方は強すぎる気はしますが、あながち的外れではないとは思っています。

 

施設には入り口はありますが出口はありません。つまり施設退所=亡くなる事を意味します。もちろん全施設に言える事ではありませんし、在宅復帰に力を入れている施設も存在します。ただ、大半の施設は人生の最後の場所としての役割を担っています。

 

そこで働く介護士さんたちも特に入居者の機能回復を望んでおらず、起立や寝返りの介助量軽減程度の改善は望んでいても、それ以上の改善はむしろ不都合とまで考えている人もいます。

 

私が5月まで毎日リハビリ介入していた施設入居者の方が今週から3回/週のみの介入になります。現在経過良好であり、施設内歩行器歩行自立へあと一歩のところまで来ています。しかし、施設内での運動の場が存在しない為、リハビリ頻度が減少すると廃用してしまう恐れがあり、機能低下に拍車をかける状態に陥ってしまう可能性があります。

その為、リハビリ以外の時間の過ごし方が非常に重要になってきます。

 

そこで介護士さんに「リハビリの一環として歩行器でトイレに連れて行って貰えませんか?」とお願いしたところ、「従業員の負担になるのでなかなか難しいかもしれません」と怪訝な顔で話されました。

 

介護士さんからすれば歩行器歩行を見守りするよりも、車椅子でトイレに連れていきササっと介助した方が楽ですぐに終わるのであまり面倒な事は行いたくないといった感じでした。

 

本人は「歩行器でトイレに行きたいが不安だから見守ってほしい」

 

介護士さんは「時間がかかるので車椅子で連れていきたい」

 

これは施設でよくある光景です。この場合本人の意見よりは介護士の負担軽減及び業務効率化が優先されます。そうなると、施設に入居することで運動機会を極端に失い、身体機能は低下の一途をたどります。

 

自立に向けて少しずつ活動機会を増やしていく必要がありますが、自立となるまでは介護士の負担が増大します。私は双方の言い分が理解できるので頭を抱えます。

 

このジレンマを解決する方法は存在しないのか。

 

本人(入居者)の意見が尊重されない環境はあってはならないと思ってはいますが、ただでさえ介護士が足りていないという世の中で、業務負担が増大するとなると、介護士が更に減少する可能性を示唆されます。

 

介護福祉士養成校の入学者数がここ12年で1/3まで低下しています。団塊世代が皆75歳以上となる2025年には、33万7000人の介護業界の人材が不足すると言われています。

 

介護士働き方改革を進めていかなくてはいけない中で、リハビリの観点からの要望はなかなか通りにくい現状です。

 

私は介護士として働いている訳では無いので介護士がどこまで業務に追われているかは分かりません。ただ、制度上毎日リハビリ介入が出来ず、自費リハビリも導入困難な場合は介護士の協力が必要不可欠です。その為、この状況は非常に歯痒く、どうにかしたい気持ちです。

 

何か良い方法は無いか、今後も模索していきます。