現在、慢性疼痛について様々な研究が進んでおり、所謂治療院も非常に増えています。しかし、慢性疼痛保有率は全く低下していません。不思議ですよね。
「治療家の実力不足ではないですか?」
それは違います。治療院で働いている理学療法士や柔道整復師等の治療家の方々の徒手技術は年々上昇していると思っています。もちろん評価の低い治療院もありますが、全体的に見て評価は年々上昇しているように見えます。
ではなぜ、慢性疼痛保有率が低下していないのか。
その原因は【仕事】と【運動】にあります。
慢性疼痛保有者の研究結果を列挙していきます。
①慢性疼痛保有者の平均年齢は43歳(30歳代~50歳代に多い)
②慢性疼痛保有者は女性に多い
③慢性疼痛保有者は都市部に多く、農村部に少ない
④慢性疼痛保有者は専門職、事務職に多い
⑤慢性疼痛好発部位で最も多いのは背中下部痛(58.6%)
つまり痛みを訴える人は【農村部にいる腰の曲がった高齢者】よりも【都会で毎日仕事に励む、デスクワークや専門職の女性】に多いということです。
もっといえば、運動習慣の無い都会のOLに多いということです。
仕事の形態・職種調査の結果、デスクワーク中心の人が労働人口の約半数を占めているそうです。特にIT化が進み、パソコン作業が増えています。長時間デスクワークを余儀なくされている場合が、地方より都会の方が多くなっています。
デスクワークが身体に悪影響を及ぼすことはこの業界では当たり前のことですし、当事者も理解している事も多いと思いますが、仕事柄デスクワークをせざるを得ないことから、慢性疼痛保有率が低下しないのではないかと考えています。
ただ、こんな研究結果も存在します。
農村部の高齢者と都市部の高齢者の歩行速度を比較した時、男性では10%、女性では30%農村部の高齢者の方が歩行速度が遅かったと報告があります。また、歩行速度が遅い高齢者のグループと歩行速度が速い高齢者のグループを比較した時、歩行速度が遅い高齢者のグループの方が早い高齢者グループよりも5倍死亡率が高かったそうです。
つまり、歩行速度が遅いほど健康寿命が短くなるということです。(あくまで一つの要因)
なぜ、都市部の人の方が歩行速度が速いかというと、都市部の会社員の方が若いうちから忙しく、常に動き回っていたからだと言われています。
前文の研究結果と合わせて考えた結果、【デスクワークを減らす】【運動を習慣化する】ことが疼痛保有率の減少と健康寿命延長に繋がることが示唆されます。デスクワークはやむを得ない可能性が高いですし、スタンディングデスクを全社導入することは現実的では無い為、運動の習慣化にベクトルを合わせるしかありません。
都会には既にたくさんのフィットネスジムが存在しているとは思いますが、今後も増やし続けることが一つと、デスクワークの人たちに向けた情報発信を積極的に行っていく必要があると思います。
このように、健康寿命の延長に向けた取り組みの足かせとなる存在は取り除いていかなくてはいけません。
健康寿命のみならず、どのような問題要素に対しても、阻害因子の除去と促進因子の増加を考えていきましょう。