南の小言

100年健康を作るPTの日常

認知症にはとりあえず脳トレ??

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この土日で幼馴染と温泉に行ってきました。中学卒業後からほぼ毎年のように開催している温泉旅行。今年で9回目ですが、参加メンバーは1回目とほぼ変わっておらず、今回も9人集まりました。

 

この歳になっても毎年10人近く集まるグループも珍しいのではないでしょうか。素晴らしい友達に囲まれていることを実感します。

 

こまめなストレス発散も大切ですが、大きな発散も大切です。

 

そんな温泉旅行にて、ずば抜けて頭の良い友達(将来官僚希望)がこんなことを話してきました。

 

脳トレばかりしていたら【脳トレの得意な認知症】が増えるだけだよね」

 

流石将来官僚になる男。私の分野のことまでよく知っているなと感心しました。まさにその通りです。

 

認知症の急増は社会問題になっており、この不治の病のようなものとどう戦っていくべきなのかの議論は至る所で繰り広げられています。

 

運動や脳トレ認知症の予防に有効であることは間違いありませんが、改善に有効かと言われるとエビデンスは高くありません。

 

特に脳トレは更に議論が必要です。脳は数え切れないほどの役割を担っていますが、脳トレで使う(鍛えられる)部分とADLで使う部分は異なっており、脳トレで認知機能改善を図ることはなかなかに難しいと思います。その為、脳トレをすればするほど解ける問題は増えるかも知れませんが、それはあくまで脳トレが得意になっているだけです。

 

つまり私の友達が言うように、脳トレの得意な認知症を増やしているだけにすぎません。

 

もちろんやらないよりはやった方が良いですが、本気で認知症の改善を図りたい場合は、脳トレの数をこなすだけでは無駄です。認知症の本質から学習していく必要があります。

 

私も何百何千の認知症患者を見てきましたが、脳トレを続けたことで認知機能改善を認めたケースにはまだ出会っていません。

 

そもそも認知症自体に目に見えて認知機能改善を認めたケースもそれほど多くはなく、それだけ認知症というものは奥が深く難しいものです。それが脳トレという作業課題のみで良くなると思ったら大間違い。

 

必要なことはその方の障害されている部分に対してピンポイントでアプローチすること。この仕事をしていると同じ認知症でも症状や進行速度が千差万別であることに驚かされます。それでも適切な評価を繰り返すことで諸悪の根源を洗い出し、

それぞれに適したアプローチを実施していかなければこの社会問題は改善方向へ向かいません。

 

認知症にはとりあえず脳トレさせとこう」

 

という思考になる人を少しでも減らしていかなければなりません。