南の小言

100年健康を作るPTの日常

歩行分析は難しいが超重要

動作分析 臨床活用講座―バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践 | 石井 慎一郎 |本 | 通販 | Amazon 

 

皆さんは歩行中にどの筋肉がどのくらい使われているかを理解していますか?

どの関節がどのくらい動いているか理解していますか?

 

歩行分析は非常に難しく、たくさんの知識を元に分析を行わなければ正しい答えを導き出すことができません。上記写真は、(まともな)PTであれば必ず知っているであろう石井慎一郎先生が編著である動作分析についての参考書です。多くのPTがこの参考書で動作分析の知識や方法を学んでおり、私もそのうちの一人です。この参考書を読めば、人間の身体を因数分解するための知識や癖を養うことができ、動作分析や歩行分析が得意となることでしょう。

 

動作分析や歩行分析を実施する際に無下にしてはいけない重要な要素。それは【遠心性収縮の存在】です。例えば「肘関節屈曲に関わる筋肉は?」と尋ねられると「上腕二頭筋!」と答える人が多いでしょう。もちろん正解です。ただ、その動作を実施する際に上腕二頭筋を始めとした肘関節屈筋群のみが収縮すると肘関節は物凄い勢いで曲がり始めます。人間の身体はそうはなりませんよね?なぜなら拮抗筋である肘関節伸展筋群が遠心性収縮を起こして曲がりすぎることを抑えているからです。

 

この【遠心性収縮の存在】を考えることは分析において非常に重要です。

 

歩行周期における、MSt〜TSuにかけての股関節伸展が十分ではない人が大勢いますが、「股関節伸展が出ていないから大臀筋を鍛えよう!」という発想は安直です。

 

実際、MSt〜TSuにおける股関節伸展は大腿直筋や腸腰筋等の股関節屈筋群の遠心性収縮によって形成されています。つまり大臀筋を鍛えたところで歩幅を大きくなりません。股関節屈筋群の筋トレや柔軟性を確保することによって股関節伸展が出現しやすくなると言うことです。厳密には背屈制限や逆脚の影響等で股関節伸展可動域が減少するケースもありますが、大臀筋の筋力低下のみで起こることはまずありません。

 

この点は知識の元で分析を実施しなければ正解に辿り着けません。

 

適切な分析を行うためにも、動作や歩行に伴う関節、筋活動の知識の習得が大切です。