身体は硬いよりも柔らかい方が良いですが、柔らかければ良いというものでもありません。関節にはそれぞれ正常可動域というものがあり、それを超えることは関節負担を強めます。
皆が1度は目指したことのあるであろう開脚も、実際には正常から逸脱した可動範囲であり、股関節臼蓋の緩みや股関節周囲靭帯の緩みの原因になると言われています。
バレリーナも将来身体痛に悩まされる可能性が高いと言われています。理由は明確です。簡単に言えば、大きすぎる関節可動域による関節負荷や足部への過負荷を繰り返したことによる身体の悲鳴です。
そこで大切なのは、正常可動域を知ることです。
ネットや教科書で調べると各関節ごとの正常可動域を簡単に調べることが出来ます。この可動域を目指していくことが健康体への第一歩だと考えています。
ただ、高齢者になってくると筋や関節の問題が複雑に絡み合い、正常可動域を目指すことに限界が来ます。そして、正常可動域を目指している途中で別関節が悲鳴をあげることもしばしば。
となると、正常可動域とは別に目標可動域の設定が必要になってきます。
目標可動域を設定するにあたり、本人が実施したい動作にどの程度の可動域が必要かを知っておく必要があります。
各動作別に膝関節の必要可動域を研究したものがあります。
歩行→67°
階段昇段→83°
階段降段→90°
椅子から立ち上がり→100°
椅子座位→93°
靴紐結び→106°
しゃがみこみ→130°
正座→140°
文献によって多少の差はありますが、大凡このくらいです。
これはあくまで膝関節のみにフォーカスしたものですが、各動作に必要な別関節の可動域も調べれば簡単に出てきます。各関節における動作別必要関節可動域を知り、目標可動域を設定することで、治療は比較的スムーズに進みます。
学生時代から【正常を知ること】が大切と常々言われてきましたが、正常を知らなければ目標可動域の設定ができません。
正常可動域及び各関節における動作別必要関節可動域を学んでいきましょう。